感染対策に巻き込まれたお年寄り

入居後の生活編

感染しても、しなくても振り回された3年間

 最初は誰でも慣れるのに時間がかかります。
どれだけ説明しても納得して頂くにはかなり時間が必要です。

ご家族と会えないもどかしさ

 老人ホームは集団生活です。
2020年の冬から春にかけて、保健所の指示のもと感染予防対策は私の働いている施設でも行われました。面会や不要不急の外出は出来なくなり、マスクの着用や大声禁止などレクリエーションの制限も増えました。

 ご入居者の中には、ご家族に会えないことに理解して頂けない方もおられました。どれだけ説明しても信じてもらえず「娘は私に会いたくないってことね」と解釈されてしまうのです。
コロナは見えません。テレビや新聞を読まない方にしてみればあまり危機感は感じなかったのでしょう。コロナを口実に会いに来てくれないんだ、と勘違いされたようです。
軽度の認知症と耳の聴こえにくい方だったので、ご家族は何度もお手紙を送って下さり、ご本人も読んでいましたが、なかなか伝わりません。

結局、自分は娘に迷惑をかけていると決めつけてしまい、自室の身辺整理を始めてしまいました。「ここにいるだけで娘に迷惑をかけるから、出て行きます。」
食堂では1人1人お別れの挨拶をしてまわり、スタッフにも感謝の言葉を伝えてくれます。食後には必ずフロアの出入り口まで行って「失礼致しました」と出て行こうとされます。
スタッフが慌てて止めに入るということが2週間ほど続いた朝、ベッドで安らかに天国へ旅立たれたのです。少しずつ少しずつ気付かない間にストレスからの負担がご本人の身体で大きくなっていったのかもしれません。

 当日の朝も朝食や排泄をすませ、バギー歩行にてベッドに座ったところまでスタッフは見届けていました。体操の時間ですよ、とお声かけに行くまで、こんなことになるとは誰も想像出来ませんでした。
今でも時々思い出しますが、私はなんとなく終活をされていたような感覚で捉えています。ご自身で無意識のうちの終活です。娘と会えない寂しさもあったでしょうが、やることをやり遂げた感じが記憶に残ります。

 コロナに関係なく、何かしらストレスからの負担は誰しも突然やってくるのかもしれません。ただ、どうしようもなかった結末にご家族のお気持ちは察するに余りあります。
ご家族は「会えないからと言って手紙だけでなく外から窓越しに手を振り合うことぐらいは出来た」と後悔されていましたが、ご本人はそれでも納得出来なかったのではないかな、と私は推測します。

 今はもう、どんどん感染予防対策が緩和されてきました。フロアに上がっての面会や気軽な外出も可能になりました。今では消毒液のボトルを持ち歩いているだけでご入居者は両手を出して下さります。少しずつ慣れてきましたが、次もまた何かがやってくるかもしれません。そしてまたお年寄りは巻き込まれるのでしょう。ただ私達働ける世代はもう少し柔軟に荒波に溶け込めるように私も含め取り組んでいけたらと思います。

団塊ジュニア世代(1971~1975生まれ)の将来

 余談ですが、今後ウィルスや争い、もしくは震災などあらゆるマイナスな影響により団塊ジュニア世代の将来はどのようになるのでしょう。

AIロボットが発達して介護スーツを着ることになるのか
海外からの介護職が減って、日本から海外へ介護職が流れるのか
介護保険料が高くなり過ぎて崩壊してしまうのか

ため息しか出ませんが、落ち込んでいる暇はありません。模索しながら少しでも空を見上げて歩きたいものです。もしかしたら様々な技術革新が進歩して明るい未来が待っているのかもしれません。とにかく振り回されないよう、巻き込まれないよう、情報を的確に収集して前向きに生きていきたいと思います。

☆まとめ☆

①感染対策に巻き込まれたご入居者がおられました。最初は誰でも慣れるのに時間がかかります。どれだけ説明しても納得して頂くにはかなり時間が必要です。

②今後ウィルスや争い、もしくは震災などあらゆるマイナスな影響により団塊ジュニア世代の将来はどのようになるのでしょう。考える機会になって頂けたら嬉しいです。

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