選ばれない老人ホーム

入居後の生活編

「選ばない」ことを選択された施設

 いつの間にか入所者が減り、翌月の勤務表を見るたびにスタッフも減り、総体的に人数が減っていく老人ホームは今後どのようになっていくのでしょうか。
どんどん新しい施設が建設される中で、待機者のいない老人ホームは将来の不安を真剣に考える必要があるでしょう。

もがく老人ホーム

 介護業界ではホームヘルパーや介護福祉士など資格があれば気軽に転職が出来ます。待遇の良い転職先を見つけたら、現時点で働いている老人ホームに留まる必要が残念ながらありません。

 設立されて10年近く経つと、オープン当初からのご入所者も生活されていますので全体的に平均年齢が高くなり、必然的に介護度の高い方が増えます。高い方が増えるということは介護量も増えるということです。
そしてご新規を少しでも多く獲得するために様々な施設に入所を(関わる頻度が高過ぎるという理由で)断られた方であっても受け入れていきます。
そうなると残りのスタッフの介護負担はさらに増え、どんどん疲弊していくという負のスパイラルが始まります。

経営が厳しくなると老人ホームの事業者が変わることもあります。母体が変わると中身も変わります。
真剣に前向きに取り組んでいる残されたスタッフ達は、試行錯誤しながらどうにか施設という船が沈まぬよう頑張ります。ただ正直この先どうなっていくのか不安しかありません。

人気のある施設ではITを積極的に使って業務を改善し、効率的に働きやすい環境を整えることでご入所者に快適な生活空間を提供出来ます。
健康チェックを行うと自動的にカルテに入力されたり、シールを下腹部に貼れば排泄パターンをスタッフの携帯にお知らせしてくれる機能などもあるようです。
様々な通信機器を駆使してご入所者にもスタッフにも居心地の良い施設を目指すことが出来るのも人気の1つになるでしょう。

そして、いつまでも余裕のない施設は昔ながらの手作業で効率の悪い残業をひたすら続けていけば、必然的に衰退していくしかありません。

皆さんがご存知であるお近くの老人ホームはいかがですか? アイテムをどんどん導入していく柔軟な施設に出会えていますでしょうか? もしかしたら高齢者施設の環境がますます二極化していくのも時間の問題かもしれません。

それでもご入所者は生きている

 以前、生活相談員の仕事をしていた時にご家族であるご長男と連絡が取れなくなる、ということがありました。お支払いだけでなく連絡すら取れない状態です。
恐らく自身の親であるご入所者の対応すら出来ない、という何らかのトラブルに巻き込まれたのでしょう。

 施設としては入所される前に連絡先として必ずお1人だけでなく、2~3人のご家族の連絡先をお聞きします。ただ、3人も書けないとか、記入しても疎遠になっているから書いても意味がない、とおっしゃるご家族もおられました。

 ただ、連絡が取れないからといって施設側としてご本人を追い出すわけにはいきません。必死で誰かを探すしか方法はありません。ご本人はそんな事態になっていることを知るはずもなく普段と変わりなく生活されておられます。
そんな中、どうにか遠方のご親戚の方からのアプローチでご長男に連絡がつきました。

 でもやはり1番いたたまれないのはご本人です。
いつの日か面会に来てくれるであろうご長男を待ちわびて一生懸命生きておられます。水面下でそんなことが繰り広げられているとは思ってもみなかったことでしょう。

 老人ホームはご本人が生活するうえでフォローをしていく施設です。ただ、全て何もかもお引き受けする場所ではありません。今回のケースは「後で連絡するつもりだった」と釈明されていましたが、施設としては先にお話しして頂きたかった記憶に残る出来事でした。

☆まとめ☆

①いつの間にか入所者が減り、翌月の勤務表を見るたびにスタッフも減り、総体的に人数が減っていく老人ホームは今後どのようになっていくのでしょうか。

②以前、生活相談員の仕事をしていた時にご家族であるご長男と連絡が取れなくなる、ということがありました。お支払いだけでなく連絡すら取れない状態です。
老人ホームはご本人が生活するうえでフォローしていく施設です。ただ、全て何もかもお引き受けする場所ではありません。

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